はじめに
クロスブリーディングについてあなたはどの程度知っていますか?
農家さんに聞いてみると
「三元交配?をするやつ!」
「モンベリアードを付けるやつ!」
「繁殖が良くなるんだよね!」
なんとなくは知っていても説明ができない人が多いのです。
とりあえずやってます!みたいな人もいますが、これを見ている人は
ちゃんと理解を深めたうえで『やるか』『やらないか』を決めてもらえればと思います。
結論 クロスブリーディングはやらなくていい
この一言に尽きます。
理由は、ホルスタインには改良の余地がまだあるからです。
それなのにあえてクロスブリーディングを取り入れる必要は無いと思います。
今まで通りホルスタイン種を授精してもらうことが1番です。
それでもクロスブリーディングに興味のある人は、ぜひ最後まで見ていってください。
クロスブリーディングってなに?
身近な例を挙げる
スーパーのお肉コーナーでよく見かける豚肉の【三元豚】がまさにそうです。
豚には『バークシャー種』『ランドレース種』『デュロック種』『中ヨークシャー種』『大ヨークシャー種』『ハンプシャー種』などの品種があります。
この中から品種を3つ選んで順番に掛け合わせると
例:『ランドレース種』×『大ヨークシャー種』×『ハンプシャー種』
これで【三元豚】が完成します。
このように3品種を順番にかけ合わせていくやり方を三元交配と呼びます。
これをホルスタイン種でやろうとしたのがクロスブリーディングです。
クロスブリーディングのやり方
日本では輸入の関係上、
『ホルスタイン種』×『モンベリアード種』×『カナディアンエアーシャー種』
の掛け合わせで行われています。
やり方としては
①ホルスタイン種にモンベリアード種を授精します。
②その生まれた子(ホル✖️モンベリ)にカナディアンエアーシャーを授精します。
③その生まれた子(ホル✖️モンベリ✖️エアーシャー)にホルスタイン種を授精します。
※①〜③を順番に繰り返すことでクロスブリーディングが完成します。
クロスブリーディングのデメリット
クロスブリーディングを行うことで様々なデメリットも存在します。
登録ができない
三元交配は異種間交配であるため、ホルスタイン種ではありません。
区分は交雑種となります。
現在の日本では、クロスブリーディング牛はすべて交雑種扱いになります。
クロスブリーディング牛に和牛を授精しても
一般的なF1(ホル✖️和牛)にはなりません。
原則、生まれる子は全て交雑種になります。
市場性が低い
登録が取れないことにも繋がることですが
メスが生まれたら乳を搾れば良いですが、オスが生まれたらそうはいきません。
「オスは市場に出して終わり」ではありません。
クロスブリーディング牛は市場性を予測できません。
どの程度の価値(値段)になるかは未知数です。
値段が付かない場合は、そのまま屠場行きになることも考えられます。
同じ交雑種のホルジャーでは、かなりの低価格で取引されることが多いので
クロスブリーディング牛も同じくらいかと思います。
生産性が下がる
賛否両論はありますが、クロスブリーディングによって個体乳量が低下することが予想できます。
なぜなら牛乳を一番生産できる品種はホルスタイン種だからです。
これは皆さんも既にお気付きでしょう。
だからホルスタイン種はここまで改良されてきました。
そんなホルスタイン種に、別の品種を掛け合わせれば乳量が減るのは容易に想像できます。
精液価格が高い
国内で流通していない精液を輸入するため、必然とコストがかかります。
しかも、メスが生まれてほしいので性選別精液(♀)を使用する人がほとんどでしょう。
そうすると、一般的なホルスタイン♀精液の方が安いです。
種類によっても価格は変わりますが一例として
例:ホルスタイン♀精液 10,000円前後
モンベリアード♀精液 15,000円前後
クロスブリーディングのゴールとは?
意外とゴールを間違えている人が多いですが
クロスブリーディングは
1)牛群のすべて(もしくは半分以上)をクロスブリーディング牛にする。
2)今まで通りの飼養管理でホルスタイン種との違いを体感する
3)検定成績や繁殖成績などを過去のデータと比較する
この3段階をもってゴールです。
比較した結果、以前より成績が向上すれば成功ですし、そうでなければ乳牛改良が失敗したことになります。
意外と授精しただけで満足している人もいますが
あくまでも乳牛改良における選択肢の一つでしかなく、生産性が低下するのなら本末転倒です。
さいごに
クロスブリーディングは試験的に取り組みが行われていますが、
一般の酪農家さんが率先してやるものではないと思います。
それにホルスタイン種には、まだ可能性があります。
もうこれ以上乳牛改良でやれることが無くなったら、
その時はクロスブリーディングも選択肢に加えても良いと思います。
しかし、今の日本ではまだ必要ありません。
それぞれの目標に向かって今まで通り改良を進めてもらえればと思います。
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